諦め/前澤 薫
 
零れる。
水道管からぽつんと一滴(しずく)水滴が落ちる。
零したのは、自分なのか、重力なのか。
些細なことか、事の一大事なのか。
じっと竦む。
死んだ魚の目が滲み、鱗と同化する。
水滴は地面を這う。
アスファルトに一本の線が引かれる。
黒ずむ。

そうして、私は闇を夢見る。
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