リッツ/カンチェルスキス
 
白い布張りの壁に向かって
 死にたいなんてつぶやいてしまいそうな夜だ
 



 おれはあの女を手放した
 けれども
 向こうのほうでは
 違うことを言ってるんだろう




 ニキビをつぶしたときの痛みに
 快感がまじる
 なかなか車庫入れが成功しない軽自動車のエンジン音が
 まとわりつくように
 響いてる




 風もやんで静止したカーテンの向こう
 空の青は完全に消えて
 ナビスコ・リッツの食い過ぎで
 おれは晩飯を食う気になれなかった






 

戻る   Point(3)