大停電の夜に/かいぶつ
 
僕が生まれた小さな町では
毎日が大停電の夜だった

プロレス中継がツーカウントで
中断してしまうことは
日常茶飯事だったし
髪が乾かぬうちに
ドライヤーの熱風が
消沈してしまうのを理由に
お姉ちゃんは高校を出るなり
早々と上京してしまった

何よりショックだったのは
僕の大好きなアニメの最終話が
停電によって見ることが
出来なかったということだ
次の日、学校では
唯一、放送を見れたという
隣町から通うクラスメイトに
結末を教えてもらおうと
人だかりが出来ていたが
僕は一向に耳を傾けようとはしなかった
つまり、口惜しくて口惜しくて
しかたなかった


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