ひよこ/千波 一也
 


ひよこを食べる猫がいて
あるときひよこが
噛みついた

それからひよこは
猫を食べたり
ときどき親を
食べたりも
する



ひよこをだます猫がいて
おかげでひよこは
言葉を覚えた

周りと少し
意味のちがう
言葉がひよこに
染みついた



ひよこを育てた猫がいて
ひよこはそこに
ゆめを見た

ゆめ見たひよこの中からは
画家がうまれて
詩人がうまれて

やがて
それらは
芸術となり
貴族のひよこがあらわれた


ゆめの形は、
はじめての
ゆめの形は
ゆっくり
ゆっくり
さびしくなった

やさしくな
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