ひよこ/千波 一也
ひよこを食べる猫がいて
あるときひよこが
噛みついた
それからひよこは
猫を食べたり
ときどき親を
食べたりも
する
※
ひよこをだます猫がいて
おかげでひよこは
言葉を覚えた
周りと少し
意味のちがう
言葉がひよこに
染みついた
※
ひよこを育てた猫がいて
ひよこはそこに
ゆめを見た
ゆめ見たひよこの中からは
画家がうまれて
詩人がうまれて
やがて
それらは
芸術となり
貴族のひよこがあらわれた
ゆめの形は、
はじめての
ゆめの形は
ゆっくり
ゆっくり
さびしくなった
やさしくな
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