aerial acrobatics 14/mizu K
いってしまうような気がする、きっと私はぼんやり
した風であったのだろう、ふいに肩口をたたかれてびっ
くりして振り向いてみれば頬にぐさりと指がつきささっ
て、やーい、という声が遠くのほうで聞こえた、そばに
は、誰もいなかった
ダイロンカラーの16番がどういう色かわすれた
ふたを開けてみれば底の方にぐるぐるによれたTシャツ
があって、ふいにまた誰かのまなざしに射すくめられる
感覚が通りすぎて、通りすぎていって、過ぎ去って、た
だゆっくりと取りあげてぱんっ、と広げてみる
いくらか色に濃淡がある、かすれたようになっていると
ころもある、タグだけが染まるのを拒否してましろかっ
た、いろいろなところに食塩が結晶している、それをひ
とつひとつ拾いあげてすかしてみる、おどろくほどきれ
いだった
***
自画像の稜線の先は
水晶であったのであろう
巨大なクレバスをひそませた
もの言わず
今日も素描されていく
稜線を越えていくものたちは
戻る 編 削 Point(4)