クジラと世界の親和性/Anonymous
 
したか、一度だけ。

そこにはたしかに海があった。
シャベルカーが数台地ならしをしていて、
その先に唐突に海があった。

その光景を見たとき、
僕はどこにもいけないと、ふと、思った。

そしてなにを期待していたのかおおむねわかってしまい
考えるのをやめた。

僕は頭上後方の彼方の空にクジラの気配を感じていたが
今は現すのはそれだけだと知っていたのでほおっておいた。

僕は彼女に嘘をついた。
いや、それは嘘とも呼べないひどいものだった。
彼女は「よくも、そんなに平気な顔をして嘘をつけるわね」
と泣いていた。
それは、たしかに嘘つきというジャンルからみると
褒め
[次のページ]
戻る   Point(0)