『その後』/東雲 李葉
 
動くことなく
今更役を替えてくれなんて
虫がよすぎる話だろう


今すぐ舞台の後ろの方で
二人の行方を見据えてる
ただの背景になりたい
主役なんて柄じゃないんだ
王子さまにはなれなかったよ
できることなら今すぐに
君を置いて逃げ出したい
雪が降る城下町を
たった一人で駆け抜けたい

腰に据えてる王剣が
ずしり と重く
その存在を誇示している
そんなささやかな重しによって
僕は舞台に止まらされる
冷たい身体に口づけを
今でも君は美しいけど
悪い魔女の毒林檎を期待している僕がいる

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