ガスで死ぬ夢を見た/五十里 久図
とてもリアルな感覚で夢の中なのに死というそれまで体験したことのない感覚で充満していた。満たされていくガスと消えゆく意識。本当に死ぬという感覚はひどく醜悪でそれまで夢想していた甘美な死というものがあまりに失笑に耐えないものであることが浮き彫りになる。黒い瘴気が視界にちらつき恐怖の内に全ての意識が収束する世界。
そこで起きる。ヘドロに包まれた朝。その世の奇異なる感情をその身で体感することもなく肉体が腐っていく。そんな夢を見た直後にいい気分でいられるわけもない。そう思いながらもその日は待ってはくれない。仕事に行こう。そうすればきっとすぐに一日が終わって余計な思いに頭を巡らすこともなくなるから。
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