水中都市/Anonymous
 
この人の体罰を受けていたという複数の証言を得ていた。

「どうせ、あいつは私が、あいつの一番醜いところは姿形はあたりまえだけど
 その喋り方なんだ、って言ったことについてうれしがっているんだろ?」

「あいつの性感帯は姿形以外ならどこだって。ウブで敏感なのさ。」

「滑稽で哀しいだろ?」

麗しき人は、左手にもっていた鞭を高々と振り上げ、首輪をはめられ、
全裸でうずくまっている男に振り落とした。

それは奇怪なほど高音で哀しい音で周囲を切り裂いた。

それは沈黙に傷をつけ、
沈黙は涙となって世界に降り注いだ。

沈黙が剥げた後にはがらんどうがあるのみで、
世界は涙で溢れた。

世界遺産の水中都市には
何世紀か昔のシャンパンゴールドのような市民の像がここかしこに散乱しているが、
それは寂れた地方都市のデパートの裏側にほおり捨てられたマネキン風情でしかなく。
たちの悪い現代アートのくずのようでしかなかった。

沈黙も哀しみも

すでにワインのアルコールのようにとっくに飛んでしまっていた。
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