夜明け氷/フミタケ
 
もの声が聞こえるけど
誰も姿は持っておらず
僕もあなたも存在しない会話を注意深く重ねて
記憶に残らないその場その場の言葉を舌に絡めては
僕は密かに沈黙の許しを請うていたんだ

季節が一切を押し流していった今
それでも思い出しているのは
いつかのあの時の彼女の指や、鈴を転がすような笑い声
選択の余地なくこの胸から目頭のあたりまでとどまりつづけて消えない
君が抱いたそのイメージの中の僕は誰だったんだろう
僕が抱いたイメージの中の君はだれだったんだろう
夜が底をつくまで、すすむ事ももどる事もできずにいて
夜が明ける街は氷の中の青と金色の世界
君との写真を額に納めたからさ
夜が明ける街は氷の中の青と金色の世界
青と金色の世界
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