ゴーカート・デパート/木屋 亞万
「床の光沢に負けないオレンジの山を過ぎまして
右手に見えます高く聳えているのが缶詰タワーでございます」
買い物カートは今日も走る、
添乗員と運転手の二人きり
休日なのでややカートは過密気味
カラフルな卵をいくつも持った女の子が「いかがですか」と叫んでいる
カートは止まる気配がなく、少女は悲しそうに卵をいくつか実演販売
青い卵は振るとカラカラ鳴って、割るとロケット花火が一つ飛ぶ
緑の卵は殻がボコボコとしていて、割ってみると丸いゴーヤだった
赤い卵はつるつる輝いて、割ると普通の卵、黄身はかなり濃い橙
ヒッチハイカーのような販売員の手には目もくれず
添乗員と運転手は身を
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