涙の音/暗闇れもん
 
雪が降る

白い世界に足跡をつけて
月明かりに照らされて黒いコートの彼と二人

外は嵐ではなくて
あの日みたいに雨も降っていなくて
馬車にも乗っていない

雷も鳴り響かないし
彼の涙の音も聞こえない

雪に吸い込まれているのか

溶けて流れて
透明な水たまりに私は沈みこんだ

涙であればよいと思った
彼の流した涙を全身で受けとめて

そのまま朝の光で灰となってしまってもよかった

コートのくびねっこをつかまれて
水溜りから引きずり出された

水苦手なくせにと言ったら

ばかとやさしく笑った








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