オーキュペテーとケライノー/小川 葉
 
 
あなたはわたしの
子ではないと
ある日母が言ったなら
その日から
またその日までも
子は母の子ではないように
自らの記憶を再構築し
それからつくられる記憶さえ
再構築しなければならないだろう

その逆もまたあるとしたら
あなたはわたしの
本当の子なの
とある日本当の母ではない
女が言ったなら
同じように人生が
再構築されてしまうのだろう

神話であれ民話であれ
現実世界であれ夢の世界であれ
真実などどこにもないのではないかと思う
真実は自分でつくるしかないように
つくられたのだと

老人は跡継ぎに
嘘を伝えて息を引き取った
跡継ぎの息子が
その嘘を見破ることになるとは
その時
誰も考えてなどいなかった

(つづく)
 
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