盗んだ桃は。/Anonymous
 
したぶどうは

刻一刻と身を崩し形を崩す。


盗んだ桃は

岩のように硬かった。


放置した愛は

かさかさに乾き
無臭無害な砂粒へその身を窶す。


盗んだ愛は


足がついて転売もままならない。


僕はただ、見つめる眼を見据える。


銃口を僕のこめかみにねじりこむ
銀行強盗と

ソファで話し込んでしまうような。

そんな

立ち位置を消失するような

そんな眼を。

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