歯磨き粉/小川 葉
 
 
歯磨き粉は
なぜ
粉でもないのに
歯磨き粉と
呼ばれているのか

ある日わたしは
天日に干して
ほんとうに
粉にしてしまったら
お日様に向かって
舞い上がっていった

こんなことしたら
警察とかに
捕まるのではないかと

あたりまえのものを
あたりまえの姿にしたら
罪になるのではないかと

そんな想像をしながら
今夜もわたしは
妻と歯磨き粉で歯を磨いた

ふたり並んで
歯磨き粉のふりをした
今日一日をふりかえる

あたりまえの
夜空の月を眺めながら
あたりまえの姿で
 
戻る   Point(1)