歯磨き粉/小川 葉
歯磨き粉は
なぜ
粉でもないのに
歯磨き粉と
呼ばれているのか
ある日わたしは
天日に干して
ほんとうに
粉にしてしまったら
お日様に向かって
舞い上がっていった
こんなことしたら
警察とかに
捕まるのではないかと
あたりまえのものを
あたりまえの姿にしたら
罪になるのではないかと
そんな想像をしながら
今夜もわたしは
妻と歯磨き粉で歯を磨いた
ふたり並んで
歯磨き粉のふりをした
今日一日をふりかえる
あたりまえの
夜空の月を眺めながら
あたりまえの姿で
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