祖父と出会う/オイタル
 

カラカラ車輪を回している
祖父はいつのまにか
地面のふちまで顔を広げて
ぎしぎし笑っている
「こうしているのも
 いっときのことだ」
と祖父は言う
僕はやっぱり
黙っていた

茶の間に戻ると
老人たちは折り重なり
互いの細い足のあいだや
汚れた耳の陰から
腕を伸ばしたり曲げたりして
許された眠りを眠っていた
さよならを言う僕に
祖父は指先をゆっくり伸ばし
唇をかすかに動かして
黒々と笑う
廊下に出て雨戸を開くと
しろがねの雲がすばやく
すばやく流れていった
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