祖父と出会う/オイタル
 
斜めに西陽の差す南向きの玄関から
黒光りする板の間を
やわらかく抜けていくと
暗い茶の間で
老人が折り重なって
お茶をすすっている
欠けた茶碗が
指先でかさこそと音を立てる
奥の部屋でも
しかれたままの布団の上や
引き戸もない押入れの中に
老人たちはいっぱいだ
「しいちゃん
 ちょっとこっちィおいで
 このお付けもんなァ
 たべてごらん
 カリカリしてなァ
 おいしいよ」
「いらないよ」
「わしんとこの庭にな
 大きな柿の木があってな
 柿の木から落ちるとな
 おい聞いてんのか こら
 足腰が立たんようになるってな
 言われてたんだがな
 そりゃも
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