一ノ宮駅、午前11時/ブライアン
冬の乾いた空に、雲は一つもなかった。名鉄一ノ宮駅から商店街へ向けて歩く。
昼に近い時間。人の往来はわずかだ。
日本の人口は、東京、大阪、名古屋の三大都市に集中している。
名古屋ではない、ここもまた、人口流出の危機にあるのかもしれない。
古びた喫茶店。モーニングセットと書かれた看板。くるくると回っている。
40代くらいの男性が立ち止まっている。太陽の光だけでは足りないのだろうか。看板の周囲にはオレンジ色の電球が光っている。
自転車が通り過ぎる。女子高生の短いスカートが風で揺れる。
彼女は自転車から降りて、進むのをやめた。いつも通りであることに苛立っている。
携帯電話を取り出す。耳に当てる。
彼女を見ている数人。誰もそれ以上の詮索はしない。
立ち止まる、その場所に、
木造の八百屋があった。新鮮だろう野菜には、ダンボールとマジックペンで作られた値札が付けられている。「大安売り」が乱立する中、店主だろう老女は座っていた。
老女は一心にキウイの皮を剥いていた。
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