鼻行生物ナゾベーム/かめたろう
ナゾベームが行く、原初のジャングル闊達に4つの鼻で踏み越えて。
気候は熱帯、場所は・・・いづこだったか、今は雨季でとにかく蒸し
暑い。湿った空気にナゾベームの嗅覚もますます冴え渡り、その歩姿、
鼻取りもいささか堂々と自信が漲っているようにも見える。
鼻の角栓から滲み出る粘着性の体液を鼻がかりに器用に老樹の幹をのぼ
り、三分の二ほどのところに手ごろな洞(うろ)を見つけるとその中で
一息ついた。
ナゾベームは鼻腔の奥、体長に比すれば不釣合いに肥大した脳髄でこんな
ことを考えた。
「心は鼻にあるや、或いは魂にあるや。そもそも魂は物質なのか観念なのか。
物
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