未完の、ソネット 「春」/望月 ゆき
 
世界に追いつけないでいるわたしに、椅子が用意され
明日という不在について語れと言う
目を閉じたときにだけ、
かつて捨ててきた言葉たちが 戻ってくる



根を、そこここに生やしては 日々が
笑いながら老いていく
明日さえも待てない世代、と歌われたのは
いつの頃だったろうか



万物の発る音で、立ち上がると
椅子はもう
砂の顔をして消えた



前方に道はなく それでも
踏み出すわたしのうしろに、
足あとは残っていく









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