人魚・2 〜蝋燭〜   【小説】/北村 守通
 
れない。そして翌日からは私の知り得る範囲外の世界で、私の知り得る範囲外の生活を営んでいるのかもしれない。
 いずれにせよ、考察するには資料が少なすぎるのは明白だった。勿論、解が得られたにせよ何があるというものでもないのだが。しかし、それでも私には、残された僅かな時間を無意味にしないために為すべきことがある様に思われた。私は立ち上がり、ほとんど無意識のうちに波打ち際に足を向けた。それで彼女の視点が再現できるというものでもなかった筈なのであるが、思いつくことといえば多分それしかなかったのだろう。
 私の向かおうとしているその先では、憐れな銀色共が今にも黒い海底に引きずり込まれそうになっていた。いっ
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