海の熱、鉄鋼の風/水町綜助
 
手のひらで乾きつつある血の色や
頬についた砂つぶ
それを指で払い落とす

あの
ざらざらとした手触りに
あの
深さをまして沈む色に
瑞々しさはあって
血の色が
紫がかっていた
だとか
感触は
幾粒ものつぶやきのように
覗く橋下のどぶ川に
落ちていってしまった
だとかは
もう忘れてしまった 
         ことを
         思い出したときに
         その背反を知る

  *

海沿いに
風車の連なる海岸に行った
激しく吹く風に
呼吸を奪われて
防波堤の向こうからは
いくつもの波の花が舞う
鉄鋼の色をした空から
剥がれ
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