過去からのコール/いねむり猫
木々が泣き叫び身をよじる 嵐の夜
蛇行する高速道路を はるかな高度でよぎる陸橋から
車たちのにじむ光を見ている
濡れて顔を覆う髪が 体温と最後の強がりを奪い去る
雷鳴に冴える記憶が 過去を手繰り寄せる
携帯が発光する
もしもし
おい 元気か
おれはさっき 大きな農場の屋根が 風で吹っ飛ぶのを見たんだ
それで 何十年ぶりかな
お前のことを思い出したのさ
まだ その家に住んでいるとは 思わなかったよ
だれか他の 知らないやつが電話に出たら
自分に舌打ちしながら
電話を切るつもりだった
ここは 今 ひどい嵐なんだ
風
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