おとなの事情/小川 葉
 
 
おとなの勝手な事情で
離れ離れになってしまった人には
当たり前のようだけれども
子供の頃に出会っているものである

勝手なおとなになる前に
離れ離れになってから
その人はいつまでも
子供のままである

のり子ちゃんは
母子家庭のあかるい子だったけど
小二のとき
札幌に引っ越していった
おそらくおとなの事情で

野球のアンパイアの真似をする
「あうとぉ〜!」という
僕のギャグを気にいってくれていて
いつまでもケラケラ笑っていた
のり子ちゃんが好きだった

のり子ちゃんのお母さんは
すこし陰のある三十代の女
といった感じで
僕はその時ちっともわか
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