風強い/じゅらいち
 
睦月の晦日
夜十時 勝手口の
ドアが開いて
ばんばんと音がする

昨日は母の誕生日だった
六十八歳になった
調理師免許持っている
毎日仕事に出ている

死ぬまで仕事をしたい
と言っている
俺は狂人
弟は引きこもり
父は宗教

睦月の晦日
夜十時 風強い
弟はいなり寿司を食べている
むしゃむしゃ食べている
母がいてこその この家族

弟の顔 一年間見たことない
俺はここを出ようと思っている
風って 見えないのに
なんでこうも激しく寒いのか

 分からん 分からん
 これからどうしたらいいものか
 今は青の時代か
 自分自身が近すぎて分からん

念々に迫ってくる
無常の風 止まないかな
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