あたらしいカフェー/小川 葉
 
 
その通りには
あたらしいカフェーができていて
まだ知らない店の中で
まだ知らない
手紙の返事を書くことにした

手紙の主は誰か
わたしがいつか
書いた手紙を読んで
書いてくれた

わたしが
その手紙を書いたのは
いつなのか

わからないまま
通りには
あたらしいカフェーができていて
昔からそこにあるように
店の中を目をつむってさえ
歩くことができた

そこにいる誰もが
手紙の主で
返事を書いてくれたすべての人
のような気がした

記号のようにみな
同じ顔をしていて同じ厚さの本を読み
誰とも話さず
誰とも会わずに
出てゆくのだった
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