あなたは僕の/小川 葉
 
 
はじめて会った
日のことを
よくおぼえていない

それくらい
はじめて会ったような
気がしなくて
その日からぼくらは
いつも一緒だった

友だちだった
恋人ではなかった
お互いに
恋人ができても
僕らは友だちとして
恋人みたいに約束して
駅前で会い
居酒屋で飲んで
踊りになんか行ったりして
カラオケを歌い
十二時を過ぎると
まわりには恋人しかいない
そんな店で
ブラッディマリーを飲み
割勘だったのに
店員が
「おすばらしい夜を」
なんて言うものだから
僕らは噴きだして
それからいつも無口になって
かならず手をつないで
歩いて帰った
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