赤 (よん)/容子
 
てたまるか、
お前にお似合いなのはこいつだ。
わたし宛の捨てぜりふが
暗闇にびちゃりと響いた。



嘘ばかり吐きすぎたわたしの体は
真っ赤に膨れてしまった。
口を開こうにも唇は
逃げ足の早い屋台の金魚。
息を吸おうにも鼻は
呼吸のおぼつかないどぶ川の金魚。
君を見つめようにも瞳は
視点の定まらない目玉のでばった金魚。
嘘の過剰摂取で
体に隠しこんできた
嘘という名の
真っ赤な金魚の面々が
漏れだしはじめたのだ。


そんなお話。
言うまでもなく
真っ赤な真っ赤な金魚の嘘です。




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