私に手を掛ける三分前/ゆるこ
 
 
 
私の首筋に手をかけるあなたのその微かな震えに
私は堪らなく深い愛情を感じた
刃物の切っ先の具現化
あなたは震えて、いた
 
 
私が生まれた日の朝
わたしの名前をそれはそれは大きな声で呼んでくれていたのを
あなたははたして覚えているのだろうか
 
蝕まれるキャンバスの中心に
私がこんこんと眠っていたことを
 
狂った言葉の端々に
確かに私が居た事を
 
 
揺れる、洗礼された夢の中
遠い電子が私の唇に生まれた血液を舐める
ぴりりと視界は霞み、
あなたは蝶番を隠し持つ
 
 

 
 
私に手を掛ける三秒前
あなたの瞳は満月のようで、
私は一瞬だけ狼になり
あなたの首を噛みちぎった
 
 
私に手を掛けた三秒後
あなたの呼吸は地面に吸われ
マグマと結合するように
空を一掻き、仰いで、
 
 
 

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