ひとのきかん/木屋 亞万
 
動物がほとんどいなくて、すきっ歯な林だけがあるような
そんな植物だけが林立する場所にも、空き缶は捨てられていた
その缶を水が徹底的に錆び付かせ、風が土に埋葬した
泥に溺れそうな缶詰の、淵が顔を覗かせる

ちょうどその辺りを
「木ばっかだと退屈だなあ」と一人ごちながら
神様は、林の隙間をうろうろとお散歩していた
「いつの時代も分別のないもんはいるもんだ」と
埋もれた缶を拾おうとした途端に、
缶のど真ん中に埋もれていた茶色い木の実が芽吹いた、
「ふむ、木缶、鉢植え、植木鉢とな」と呟きながら
錆びた淵に守られた幸運な木の実に
ひとてま加えて味のある生命にしてやろうと神様は考えた
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