ジャングルでもジムでもない遊具/凡
いつか来る母さんの優しい足取りを待ちながら
僕はジャングルジムの中に入って夜の保育園をそっと見つめていた
ジャングルジムの中から覗く世界は無数の穴からできていて
そこから覗く漆黒の小さなお手々に
ひとつずつやさしくキスをしたら
声も洩れないぐらいの小さな笑い声が聞こえてきて
初めて人間のお友達ができたと思った
母さんの柔らかいお腹の上じゃなくても
僕は本当にここで眠ってもいいと思った
ジャングルジムの中で膝小僧にあざをつくりながら
僕はずっと踊り続けたんだ
園長先生がソーセージをくれたから
僕はもうソーセージとジャングルジムがあればいいと思った
昨日しんだ猫のことだって
一度も思い出さなくてすむなら
どんなに嬉しくて涙が出るだろうと思って、
回転する紫ピンクのお空に
一粒の涙をリボンで結んでプレゼントしたよ
それからそのリボンのはじに掴まって
僕は初めてお空を飛んだ
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