汀のドラえもん/長元坊
 
向かって緩やかな曲線の微笑をたたえていた
空を抱くように短い手を広げていた

無心の抜けた私の目は
まるでそこに宇宙の中心が生まれたかのように
真ん中にひっついたドラえもんの二つの瞳を見た

黒いガラス玉のような瞳は
笑顔だった
笑顔しかなかった
冬の冷たい風に吹かれようが
浜辺の乾いたワカメと共に転がされようが
ひと時も笑顔を絶やさない笑顔が
ドラえもんの
ぬいぐるみの「願い」だった

だれがこの「願い」を込めて
ドラえもんのぬいぐるみを作ったのかは知らない
機械的に大量生産されたのかもしれない
けれど、私が浜を去り、夜になった今も
夜空に向けて微笑み続けているドラえもんは
まぎれもない無心だと、そう思う
宇宙の皮膜も風も海も空も
すべてを見通しながら微笑んでいると
そう思う


ドラえもんにとっての永遠の微笑が
私の何に当たるのかを考えている

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