汀のドラえもん/長元坊
 

浜辺を歩くうちに
無心がいつしか完成していた
小波の彼方の
青空と海原のやりとりに耳を傾けながら
何することもなく歩き続け
立ち止まった場所が
無心の終わりだった

海を見た
だが見えなかった
孤島を見た
見えなかった
雲を見た
見えなかった
風を見た
見えなかった

さっき見ていたのは宇宙の皮膜だったのかもしれない
そう思ってまた歩き始めた

歩き始めたとたん、砂の上におかしなものを見つけた
ドラえもんの、ぬいぐるみだった
あの空色をしたドラえもんが
なぜか幼稚園児の帽子とカバンを身につけ
おまけに「ドラえもん」という名札までつけて
天に向か
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