二月の巣箱/
吉兆夢
うずくまるハンガーを
揺すったのは沈黙
結露のむこうにしろい
こうもりの舞う
私だった制服の
傷口みたいなスカーフ
を抱きしめられない半袖さえ
やわらかい、夜に
おりかさなって温もる
音のないはばたきたちが
ねじくれた背中の
ずっと、した
四畳半を押しあげる
ゆるやかな息 に
みえない場所から
ほどけてゆく
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