朝の次曲/長元坊
ちがあまりにも悦び目まぐるしく
世界を歌い翔けるのを聞いて
その明け染めのアレグロに
偉大なる黎明のファンファーレに
いやがおうにも第九のはじまりを感じたのだ
だが朝はかくも速やかに自らページをめくる
親愛なるアダージョ
鳥たちの金管より花たちの唱和へ
生命事物の静かなる息使いへ
物語を知らず、物語を奏でるものたちの即興へ
眠りから目覚めへ
私の胸の奥から聞こえてくるものは
ほかでもない、存在の自然
それは生あるものの最初の鼓動
森羅を流れる無音の読経
とくとくと
とうとうと
ああ、私のハートは人間世界を未だ知らない
世界は真っ白のままだ
知れば鼓動は早まるか
いや、早まりはしまい
知れば読経は乱れるか
いや、乱れはしまい
花よ
おまえたちの歌が聞こえる
意味もなく目的もなく
歌い始めた歓びの詩が
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