おさんぽ/石川和広
どんなに そっと
気配をとられないように
歩いても
足音がアチコチぴょんぽこ
飛んでいくんだ から
して
この角をまがると
その足音が
つぶてになって
あたるので あの木に
気にしないようにしていても
空が少し背をかがめても
運送トラックが
忙しく目の前をゆらしても
私は角のむこうの ポプラの木に
あやうく記録されてしまう気がして
不安なのだ
それは 私の耳の中の草や
目の奥の砂つぶ星が
さわいでいるような感じで
少し うつむいて足早に 木の前を
去ろうとしたら
おばさんに
ぶつかって
少しにらまれた
そんなに にらまなくてもと
思って通りすぎざま
上目づかいに
ポプラの木を見たら
なんだ 涼しげな
ただの電信柱だよ
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