傘を差す/浅井実花
時間だけが過ぎ去っていく
どれくらい君と過ごしたろう
とても短いものだった
何処へ行ったの?とは訊かない
何も正しくない
何も間違いじゃない
そう信じたかっただけなのか
僕は、過ちを犯したのか
過ちは暗い闇の中に葬られた
火葬された過ちは
ぱさぱさとした灰になって
今、僕が抱えている
生きていれば見れるものを
失ってしまった君も
失っていない僕も
今この地に同時に立てなくとも
太陽は悔しいくらいに大地を照らし
月は涙のような灯りを点す
そして今日も地球は回っていく
空だけがいつだって透明で
雨だけがいつだって綺麗に
永久だけが約束されないこと
未知は見えなくて
僕は門の前で傘を差す
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