君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
を握る手を止めて溜息混じりに嗜めた。
「だってさぁ……」
 慣れ親しんだ一年生のクラスと別れ、緊張した面持ちで挑んでいた二年生のクラス。それにもやっと慣れ始め、これから新しいクラスメイトと上手くやっていこうという矢先に、何が悲しくて病院のベッドの上で一日中寝そべっていなければならないのか。それに――
「まぁ、あんたは子供の頃から今くらいの季節が好きだったしね。高校生にもなって、一日中散歩して、ヘトヘトになって帰ってきたり。まぁ、鬱憤が溜まるのも仕方ないか」
 母はふふと微笑みながら、皮むきを再開した。林檎は一瞬の淀みなく赤を失い続け、しかもむかれた皮は一度も途切れることなく、ゆったりとした
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