さがしつづけてしまう/石川和広
れたような家の間を
すこしずつ辿るとき
少し先の
角を曲がっている人影が
僕のようで
自分の片身のようで
その人は誰と話すんだろう
その声はどこから来るんだろう
その先にはたばこ屋があって
ついこないだ営業をやめた本屋があって
そういうなのがうわっと気になって
疑問やさざなみが私の中に生れてしまう
知らない婆さんが引き戸を開けて
植木鉢をみている
まなざしでしかない
まなざしですらない
あらゆるまなざしの中に
どうしてもひび割れた何かを塗りつぶすにかわを
しつこくしつこく探してしまう
闇雲に探してしまう
探すことそのものが虚偽や不正に思える
探すことに罪がある
深淵を埋めてしまうことは罪であるように思い込んでいる
生き物はうまく傷を治すのに
細胞は日々生成しているのにそれよりも早く
早くと
より早く私の周りにある深淵を
塞ぐにかわを探し続けてしまう
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