蛸/亜樹
八つに裂かれてしまいました。
始まりはたぶん生まれた日に。
道徳だとか協調だとか
個性だとか信念だとか
我儘だとか論理だとか
金銭だとか健全だとか
そんな風な刃物が
繰り返し繰り返し
体の上に降ってくるのです。
いっそどれか一つなら良いのに!
どんくさい私には避けられようはずもなく
かと言って律儀者だと褒められもしないまま
とうとう八つに裂かれてしまったのです。
八つに裂かれた体を見れば
ああ、どこかで見たようなそれ。
海の底でこそこそぐにぐに
卑屈に這いつくばって進むそれ。
なんだ私は蛸だったのだ。
言われてみれば裂かれた部分は
なんということもない
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