詩片H ?/土田
 
まれてはじめて
せかいに触れてしまいました
万華鏡はきれいかい?
影の雨水がしたたりおちて
腰のくびれをさかいに
くるくるくるくるとまわってゆきます
ほっぺを紅潮させて
浅瀬であそぶ魚の呼吸を身につけて
じゅじゅじゅと蒸発しそうになって
声にならない声ではなく
声になりすぎた声を
だれも聞いてはくれません
あの子は
悩ましい詩に黄昏て
うまれてはじめて
せかいに触れてしまいました
万華鏡はきれいかい?
とてもとてもとても
つき破ったのは他でもない
あの子のせかいでした
とてもとてもとても
立てなくなって
見られなくなって
とてもとてもとても
せかいは
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