遠い呼び声/冬 月夜見・乱太郎/乱太郎
冬
新緑の匂いなど知らない
今は深く眠るだけだという
獣たちの叫び声を閉じ込め
風の白い息だけが聞こえてくる
妖精のように踊っていた水
山々に見つめられても
厚い衣の下に身を隠す
時折丹頂鶴が訪れ湖面で舞う
氷点下
底はどこにもない
氷のぬくもりを抱いて
夜空は澄んだ瞳で
ひとが生まれる以前の世界を映し出す
遠い異国で途切れた赤い糸
棺のなかで眠る前に目覚めさせて
君の呪文が僕を呼び覚ます
ならば
本能の赴くまま行け(ゆけ)
吹雪は耳元で叫ぶ
北風は耳朶を赤く染め上げて
くちづけて言う
凍えたのなら
温めあえばいい
恋心が冷めたのなら
寄り添い打ち融け合えばいい
恋人たちよ
互いに見つめ合い
抱きしめ合え
と
導かれるままに
僕は今 君のもとへ向かう
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