雪のひとひら/小川 葉
 
女にプレゼントして、そうして別れた。もうぜんぶ読んでしまったような気持ちになっていた。結婚することで、父がしてきた借金を、ないものにできるなら、芙美子ちゃんはずいぶん高い女だと思うしかなくて、安いプレゼントをしてしまったものだと、後悔していた。
この街は、なにも変わっていない。芙美子ちゃんも、故郷のひとも、私も。

 週末、パルコのれいの店に行くと、あの娘はもういなかった。店員に聞くと、結婚退社したのだと言う。女の人生は、それが幸せであればいいのだ。幸せにさえ、なればいいのだ。外に出ると、仙台の街にも、雪のひとひらが降っていて、降ってきたかと思うと、私の鼻の上に落ちて、そうしてとけて、消えていった。とても肌寒い夜なのに、なぜだかとてもあたたかい夜だった。
 
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