裏木戸/
小川 葉
裏木戸が
閉じたり開いたり
冬の言葉で話してる
積もる
雪の音以外
何も聞こえない
意味の欠片さえ
さくさくと
家に帰る足音が
遠くからやってくる
もっと遠い
何処かへ旅立つため
この世界にあるものを
消してゆく
この異国の景色を
知っている
色の白い母の名前を
わたしは今も
すらすらと
こたえることができる
裏木戸から
見知らぬ誰かが出てゆく
気配のほかに
何もない
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