南国の木/
小川 葉
南国の木が立っている
わたしのように
雪国に生まれてから
ずっと
南国の木は知らない
自分が
南国の木であることを
雪国の木であると
信じている
雪国で生まれたなら
知っている
そのさみしさを
その途惑いを
ここがいったい
どこなのか
ときどき
なぜここにいるのか
わからなくなる
南国の木が立っている
わたしのように
そこにしかない
ふるさとに
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