あの頃の子供/まどろむ海月
がするが、まあ、これが成長ということだろう。
ふと
『子供だったあの頃は
あの頃の子供にきっとそっくりだったのだ、というか、
いや、ひょっとして、あの頃そのものなのかもしれない じゃないのか…』
と、思ったとたん、こちらをちらっと向いて、さみしそうに笑ったと思ったら、
みるみる大きくなって、なつかしいあの頃の姿になって、その一瞬に消えていった…
ああいやだ、また置いておかないでくれ、と泣き叫んだが、
もう取り戻しようがないのは、わかっていて、一日中、涙が止まらなくなって
あの頃は あんなふうに戻ってくるんだ
子供だったあの頃を見せたくて
あの頃の子供 いや
子供だったあの頃さえ失ってしまった僕は
いったい何がいけなくて と思うと 訳がわからなくて
休みのたびに 一日考え続けて涙がとまらず
泣き疲れて眠ってしまうと
翌朝は不思議にすっかりすっきりして
意外に元気よく
職場へ向かえるのだった
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