あの頃の子供/まどろむ海月
きょろきょろして挙動不審者に思われるのもまずい。
どきどきして玄関の扉を開けたが、いるはずはない。
ところが、庭のほうで気配がするので、あわてて覗いてみたら
バッタを追っかけているではないか。捕まえたのでやばいと思い、
「おいやめろ!」と声をかけたが、すっかり野生になったきらきらする目で、
こちらを見てずるそうににやっと笑って、とめるまもなく口に放り込んでしまった。
あわてて口をこじ開けようとしたら、もがいて引っ掻いたあげく、
ゴクンと飲み込んでしまった。どうしよう、医者に連れていくか、と思ったが、
こちらのほうの異常が疑われるにきまっているので、様子を見ることにした。
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