荒川通り3丁目/リーフレイン
やっさん
やっさんは九州から中卒でやってきた人だった。
工場に勤めて、結婚しそこなったまんまで55になった。 なんかの副職長という肩書きがついていたけど、給料は安いまんまで、九州から出てきたとき入った6畳一間に3畳の台所がついた部屋にずっと暮らしていた。
酒が強く、上手な酒飲みだった。炭坑節を歌うのがうまかった。
9月の連休明けの火曜日、やっさんは工場にでてこなかった。心配したカネさんがちょっと抜けて見に行くと、ちゃぶ台の横でパンツ一丁で倒れていた。もう冷たくて、臭かった。やっさんは3年前から癌になっいて、遠からずこうなるはずだった。そうなるだろうと思ったからか、戸口の鍵はいつも開けっ放
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