売々/土田
 
あなたさまが踊りたいといって、手をむしりとったので、わたくしはなすがまま、夜の殻にこもったやわらかに静まりかえる街を、ふたりは繋がって抜けてゆくのでした

あなたさまは街の足音たちに針を落とし、ときに服屋の玻璃のまえで、うずくまっている少年の貧乏ゆすりのように、ときにレストランの路地裏で、残飯をあさる獣じみた野良犬の前足のように、ときに広場で道化を演じ、小銭をせびる老人のタップダンスのように、あなたさまはその絶えずかたちをかえる曲調を、絵画のような描線をえがきながら、わたくしのむしりとった手をリードしてくださったのでした

あなたさまは街の足音たちに針を見下し、幾度なく浴びせてきたその最後
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