月暈/Izm
 

肺をすり抜ける

君の微粒子は
混じるはずもない

足りない日々の感情を
静かな笑みで埋めてみると
ひび割れた器から
しっとりと零れてしまう

幾つかの季節が流れ
吐息が白く浮かび上がる

煙草に火をつけ
暗闇に震える僕に
力強く温かい手の感触が
僅かな月明かりと重なり
更なる儚さを連れてくる


後ろ姿が見えなくなったのは
消えかけの街灯が
力尽きたわけじゃなく

歩きだした足音が
少しずつ鈍く、
やがて微かな振動さえ消え
月は目の前だけを照らしていたから


影さえ見えぬまま
手探りで歩き続ける
穏やかな風を感じて
隙間を埋めるように



もう
君に届かない。



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